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2025.08.13 NEWS

【お知らせ】明石仁十病院との共同研究成果が国際医学誌『Healthcare』に掲載

2025年7月14日、明石仁十病院(兵庫県明石市)副院長 泌尿器科 沖波 武先生の論文「Circadian Lighting Was Associated with a Reduction in the Number of Hospitalized Patients Experiencing Falls:A Retrospective Observational Study」が、専門家による審査(査読)のあるスイスの国際オープンアクセス学術誌『Healthcare』(MDPI出版)に掲載されましたので、その概要と意義についてご報告いたします。

 

本研究は、明石仁十病院(兵庫県明石市)と山田医療照明株式会社(本社:東京都)が共同で行いました。入院患者にとって重大なリスクである「転倒」に着目し、概日リズム(サーカディアンリズム)に配慮した照明環境(以下、概日照明)が転倒の予防に効果をもたらすかを検証したものです。

 

研究は、同院の一般病棟・回復期リハビリテーション病棟にて実施しました。病棟の移転改築に伴って概日照明を導入した後に入院した患者(介入群)と、移転改築前の従来の蛍光灯照明下に入院した患者(対照群)を対象に、転倒を経験する患者の率を比較する後方視的観察研究として行われました。

 

照明環境の設計および照度の計測は、山田医療照明株式会社が計測協力を行いました。介入群における概日照明は、午前7時から正午までの間にメラノピック照度275以上を確保するように設定され、自然な昼夜リズムに近づけることを目的としています。

 

概日照明の光の変化

 

 

概日照明とは、私たちの体に本来備わっている「体内時計」のリズムを整えることを目的とした特殊な照明です。朝から日中にかけては、心身を活動的にする爽やかな光(高い色温度)を、夕方から夜にかけては、心身をリラックスさせ自然な眠りを促す穏やかな光(低い色温度)へと、時間帯に合わせて光の色や強さを自動で変化させます。今回の研究では、この概日照明を導入した改築後の病棟の患者(216名)と、導入前の従来の蛍光灯照明だった改築前の病棟の患者(200名)の転倒を経験した割合を比較しました。その結果、概日照明を導入した改築後の病棟では、転倒を経験した患者の割合が15.0%から7.4%へと、およそ半分にまで有意に減少することが明らかになりました。

 

この研究結果は、療養環境の「光」を整えることが、患者の体内時計の安定化を通じて、転倒という不慮の事故を減らす新しい有効な手段となりうる可能性を示唆しています。特に、ご高齢の方や、従来の転倒予防策が難しい方々にとっても、効果が期待できる可能性があります。今後、概日照明が入院患者の転倒予防に及ぼすメカニズムについて更に研究が進むことが望まれます。

 

■ 論文情報
タイトル:Circadian Lighting Was Associated with a Reduction in the Number of Hospitalized Patients Experiencing Falls:A Retrospective Observational Study
掲載誌:Healthcare(MDPI)
掲載日:2025年7月14日
URL:https://doi.org/10.3390/healthcare13141692(無料ダウンロード可能です)

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